売れないラインナップ数。品揃えの数は多ければ多いほどよい、というわけではない。
今回は、品揃えの最適数についてお話ししたいと思います。
このブログをお読みいただいている企業の皆さんは、自社で販売する商品のラインナップ数をどのように決めていらっしゃいますでしょうか。
新商品を目立たせるために古い商品をラインナップから削除されているところもあれば、顧客の多様なニーズに応えるために、新商品が増えても古い商品を維持するというところもあるかもしれません。
後者についていうと、品揃えの数は可能な限り多い方が顧客にとって最良の選択肢を提供できるので良いのではないか、という考えもあるかもしれません。
確かに、1つだけの選択肢だけでなく複数の選択肢を提供することで顧客のニーズに応えていくという点においては正しいと思います。
しかし、人間の脳の処理能力には限度があり、あまりに膨大な選択肢を前にすると逆に選択する意欲を失ってしまう、というのが昨今の研究によって明らかになっています。
今回は、膨大な選択肢を提供することの弊害と、最適な選択肢、すなわち商品ラインナップ数について簡単に解説していきます。
参考文献は『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』です。
早速、品揃えに関する研究をご紹介していきます。
要旨としては、スーパーマーケットにジャムの試食コーナーを設置し、小さな品揃え(6種類)のジャムと大きな品揃え(24種類)のジャムのうち、どちらの品揃えのジャムが最も売れるかを調べたものになります。
まずは、それぞれの品揃えごとに、どれだけの顧客が試食コーナーに立ち寄ったかを見てみましょう。
別の研究助手、ユージーンが、試食コーナー近くの高級調理器具売場に張り込み、ここから入店者数と、ジャムの試食に立ち寄った客の人数をこっそり数えた。その結果、二四種類のときは、買い物客の六〇%が試食に立ち寄ったが、六種類のときは買い物客の四〇%しか訪れなかったことが判明した
ここからわかることは、大きな品揃えの方が顧客の目を引くということになります。では、実際に購入に至った顧客はどのくらいの割合だったのでしょう。
六種類のジャムのうち、ジャムを購入したのは三〇%だったが、二四種類の試食の場合、実際にジャムを購入したのは試食客のわずか三%だったのだ。大きな品揃えの方が、買い物客の注目を集めた。それなのに、実際にジャムを購入した客の人数は、小さな品揃えの方が六倍以上も多かったのである。
いかがでしたでしょうか。 今回はジャムという比較的身近な商品の事例でしたが、他にも選択肢が多すぎることで正常な判断ができなくなってしまうものもあります。代表的なのは自動車です。
皆さんはディーラーで自動車を買ったことはありますでしょうか(最近はそもそも自動車を買わないという方もたくさんいらっしゃいますが)。私も一時期、自動車関係の会社で勤めていたことがあるのですが、自動車を買うときは、車種やグレードだけでなく、色やホイールの種類、その他無数のオプションといった膨大な選択肢を検討する必要があります。
よって、一つの自動車を買うという決断に至るまでに、顧客は24種類のジャムどころではない選択肢を検討しなければならないのです。これに辟易してしまい、結果的にディーラーの営業担当に丸投げすることになるのです。
このように、膨大な選択肢は逆に顧客にストレスを与えるため、購入の決断を困難にしてしまいます。
企業の皆さんが商品ラインナップ数を検討される際には、なるべく小さな品揃え(多くても6種類前後)で顧客に選択肢を提供することが有効であるといえるでしょう。
[参考文献]
シーナ・アイエンガー 著,櫻井祐子 訳『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』