グランディングパートナーズ|Grounding Partners

中小企業診断士DHが運営するブログです。「仕事」と「幸福」を主軸に、どうすれば経営者と従業員の方が幸せに、かつ生産性を高めて働くことができるかについて、その知識や知見を数々の文献を参照しながらご紹介していきます。

相手から信頼されていないことがわかる4つのシグナル

今回は信頼に関するテーマでお話ししようと思います。

以前に、従業員からの信頼を高めるというテーマで記事を書きましたが、マネジメントをご担当されている方であれば、従業員から本当に信頼されているのかを確かめたいとお考えになるのではないでしょうか。 

 

blog.groundingpartners.com 

しかしながら、実際に従業員から信頼されているか否かについては、アンケートを取ったとしてもなかなかわかりにくいのではないかと思います(アンケートに答える人たちも、まさか堂々と「信頼してません」と答えるわけにはいかないでしょう)。

実は、他者から自分が信頼されていないかについては、相手の身体のあるサインを見ることである程度予測できるようなのです。

今回は、信頼されていないことがわかる4つの身体のサインについてお話ししたいと思います。

参考文献は、『信頼はなぜ裏切られるのか 無意識の科学が明かす真実』です。

 

著書では、身振り手振りといった身体的なシグナルから信頼度を予測するために、「ギブ・サム・ゲーム」と呼ばれる実験を行いました。

ギブ・サム・ゲームとは、利己的に振る舞って相手よりはるかに多い利益を得るか、二人とも少額の利益を得るかという選択肢を対立させることで、信頼がかかわるいろいろな状況とよく似た状況を作れる。ゲームの開始時点で、各自に四枚のメダルが与えられる。それぞれのメダルは、持ち手にとっては一ドルの価値があるが、相手にとっては二ドルの価値がある。したがって、利益を最大にし、かつ長期的な協力関係を確保するための最も誠実で協力的な方法は、メダルを四枚とも相手に渡すことだ。この選択によって、二人とも八ドル手に入る。だが、目先の利己的な利益を望むならば、最良の選択はまったく異なる。メダルを四枚とも持ち続け、相手がメダルをすべて渡してくれることを願うのだ。そうなると、あなたは一二ドルもらうが、相手の取り分はゼロとなり、だまされたように感じる。

ここでの信頼度は、相手に渡したメダルの数で測定することができます。メダルの数が多ければ相手を信頼している(誠実に振る舞う)となり、少なければ信頼していない(不誠実に振る舞う)と判定されます。

 

実験では、ギブ・サム・ゲームを始める前に参加者の2名に対面で会話してもらいます。

ここでの参加者の身振り手振りなどの身体的な動きを調査した結果、次の4つの動作の回数が多かった人物はゲームで不誠実に振る舞う(メダルの数が少ない)ことがわかりました。

  • 腕を組む
  • 体をそらす
  • 顔に触れる
  • 手に触れる

 

著書では、上記の動作について以下のように補足します。

このシグナルを構成する個々の要素については、いろいろと納得がいく。以前から 、体をそらすのは相手を避けたい気持ちの表れだという証拠があるし、腕組みは、親交や絆の形成を望まない気持ちを示していることがある。同様に、顔に触れたり手をもぞもぞと動かしたりすることは、不安を表している可能性がある。これらの仕草が合わさると、人との交流を望んでおらず、気後れしているか今後の振る舞いについて悩んでいるようなイメージが浮かび上がる。つまりその人物は、あなたと友人になる気がなく、あなたの望まない振る舞いをしようと考えているということだ。

 

いかがでしょうか。もし従業員と会話していて上記のシグナルが頻繁に見受けられた場合は、信頼関係の面で何らかの問題が潜んでいるかもしれません。なるべく早めに専門家や周囲の人のサポートを得るといった対応が必要となるでしょう。

 

[参考文献]

デイヴィッド・デステノ 著,寺町朋子 訳『信頼はなぜ裏切られるのか 無意識の科学が明かす真実

コストをかけずに従業員のやる気を高める方法 内発的動機づけの観点から

今日は動機付けについてお話ししたいと思います。

企業の皆様にとって、従業員の方々が自律的に、かつ生き生きと働いてほしいかと聞かれれば、おそらくほとんどの方がそのとおりだとお答えになるでしょう。

しかし、現実には指示待ち状態のように受け身の姿勢になっていたり、毎日辛そうな表情を浮かべながら黙々と業務を行なっている従業員の方もいらっしゃることかと思います。

そのような状況において、従業員の方がやる気を出して自律的に仕事をしてもらうにはどのようにすればよいでしょう。

一般的には、福利厚生を充実させたり、従業員のパフォーマンスによって給与査定するといった対策がなされることが多いように思います。

ですが、従業員のやる気という観点においては、上記のような対策以外で、より有効な方法があるのではないかということが心理学の研究において示唆されています。

それは、金銭の報酬といった外部的な報酬だけに頼るのではなく、従業員の内的な感情に働きかけることでやる気を高めることができるのではないか、という考えに根ざしています。

 

今回は、心理学の観点から従業員のやる気が高まるメカニズムについて解説しつつ、どうすればそのメカニズムを実務に生かせるかについてお話ししたいと思います。

参考文献は『人を伸ばす力 内発と自律のすすめ』です。

 

続きを読む

なぜ挫折してしまうのか? 「自制心」を高めて成功に近づけるための実行プラン

今回は「自制心」について話したいと思います。

私生活や仕事において、長期的な目標を達成するために目前の短期的な誘惑を克己し、努力を重ねることはとても大切ですね。

健康的な生活を送るのであれば、適切な睡眠時間を確保したり、良質な栄養をとることが必要となりますが、そのためには無駄や夜更かしやジャンクフードは避けなければならないでしょう。

仕事で長期的なプロジェクトを成功させるのであれば、目前の辛い現実に向き合い、それを乗り越えることが必要となるでしょう。

このように、長期的な目標の達成には私たちの自制心が鍵となりますが、ときどき自制心が働かず思わぬミスをしてしまったり、ちょっとした誘惑に負けてしまって後悔してしまうことは誰でも経験はあるのではないでしょうか。

 

ところで、みなさんはマシュマロ・テストという心理学の実験をご存知でしょうか。

お菓子の名前をとっているので美味しそうなイメージをもたれる方もいらっしゃるかもしれませんね。

少し概要を説明すると、これは1960年代にスタンフォード大学のビング保育園で行われた実験で、未就学児に対して「今すぐマシュマロを1つもらうか、20分待ってマシュマロを2つもらうか」を試してもらうというものでした。

園児はすぐ目の前にマシュマロが1つ置いてある状態にさらされるため、すぐに食べてしまいたい誘惑にかられます。

マシュマロ・テストは数十年以上にわたる追跡調査が行われていて、20分我慢してマシュマロを2つ手に入れた園児と、すぐにマシュマロを1つ食べてしまった園児とで、その後の学業成績や対人関係が異なるといったデータが示され、米国内ではメディアに取り上げられるなど非常に話題になりました。

 

この一連の実験結果は、主に自制心の文脈で心理学や行動経済学の文献で数多く引用されるなど、他の研究にも大きな影響を与えています。

 

今回は、マシュマロの誘惑を自制心をもって克己する脳のメカニズムについて解説しつつ、どのようにして自制心を育み仕事において成功をつかむことができるかについて考察したいと思います。

 

参考文献は『マシュマロ・テスト 成功する子・しない子』です。

 

続きを読む

「個性」の生かし方 コンテクストに着目し能力を引き出そう

今回は「仕事における個性」というテーマでお話ししたいと思います。

企業の皆さんは、従業員の個性が大切かと聞かれれば、おそらくほとんどの方が「大切である」とお答えになることと思います。

ですが、実際に採用や人材育成、配置転換等の現場においては、従業員それぞれの個性に着目するのはなかなか難しいのではないかと思います。

例えば、採用の現場で新たに経理担当者を募集しているのであれば、まず簿記に関するスキル(資格等)や、過去に経理職を経験しているかどうかといった情報でふるいにかけ、採否を検討していきますね。

ところが、実際に採用してみると、組織の文化にフィットしなかったり、思っていたよりも能力が足りないといったミスマッチは頻繁に起こることと思います。

また、人材育成や配置転換といった場面においては、その従業員が営業担当者として採用されたのであれば、その人のキャリアは主として営業部門のなかだけで描かれる(営業担当→チームリーダー→課長→営業部長→役員等)ことは少なくありません。

仮に、営業業務よりも経理業務に適性があると従業員本人や周りが気づいていたとしても、適性にあった配置転換がなされるケースはあまり多くないように思います(結果として、その従業員はキャリア転換を図るために転職をしてしまうでしょう)。

 

このように、従業員の個性にあまり着目しなかったことによって、企業にとって損失が発生するのは非常にもったいないことだと思います。

今回は、個性学という学術分野の知見を参考にしながら、どのように従業員の個性に着目し、それぞれのパフォーマンスを高めていけるかについて検討したいと思います。

 

参考文献は、『ハーバードの個性学入門 平均思考は捨てなさい』です。

 

続きを読む

個人を対象にしたインセンティブ制度はもう古い? チームのやる気を高める人事評価の考え方

今回は人事評価のテーマでお話ししたいと思います。

従業員の方々のやる気やモチベーションを高めるための評価制度のひとつとして、個々人の業績や成果に応じて報酬を支給するようなインセンティブ制度が有効だと考えられていますね(ここでの報酬は、金銭による現物支給だけでなく、ストックオプション付与のような将来の報酬を期待させるものも含まれます)。

企業の皆様においても、このような評価制度を導入されている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

一方で、高いパフォーマンスを上げている従業員に対して多くの報酬を支給したにも関わらず、その従業員のパフォーマンスがなぜか低下してしまったり、会社の評価に関して社内で不公平感が高まってしまい従業員同士の人間関係が悪化するようなことも一部ではあるのではないでしょうか。

このようなことがなぜ起こるのでしょうか。理由として、上記のインセンティブ制度の設計そのものに欠陥があるという指摘があります。

つまり、従業員個人を対象に支給するという発想自体に問題があるというのです。

 

今回は、従来のインセンティブ制度の問題をもう少し掘り下げつつ、別の視点からインセンティブ制度のあり方を見直してみたいと思います。

参考文献は、『愛と怒りの行動経済学 賢い人は感情で決める』です。

 

 

続きを読む

「思っていたのとなんか違う」を回避し、未来を適切に予測する方法

今回は人間が未来を読み違える理由とその対策についてお話ししたいと思います。

未来を読み違える例は、日常的なものからビジネスに関するものまで様々です。

日常的なものですと、「絶対に楽しいに違いない!」と思って友達と遊びに出かけても、実際はそれほどでもないと感じたり、「これは自分に似合う!」とワクワクしながら購入した洋服を実際はそれほど着用しなかったり……

ビジネスに関するものですと、「この業務改善ツールを導入することで当社の業務が劇的に効率化できるに違いない!」と思って実行したにもかかわらず、実際にはそのツールが社内に浸透せず、余計なコストだけが嵩んでしまうなど、例をあげればきりがないほどです。

 

実は、このような未来を読み違えてしまう現象は、人間の脳の仕組みに由来するものであることが示唆されています。

今回は、この人間の脳の仕組みについて解説するとともに、どうすれば未来をより適切に把握することができるかについてお話ししたいと思います。

参考文献は『明日の幸せを科学する』です。

 

続きを読む

相手のちょっとしたイライラがもたらす「仕返し」のリスク

唐突な質問ですが、皆さんは「仕返し」をしたことがありますか?

例えば、今まであなたがずっと欲しいと思っていた洋服を通販で購入したとしましょう。あなたは手元に届いた商品の包装をワクワクしながら開封します。ところが、包まれていたのは、糸のほつれやシミなどが目立つ粗悪品なのでした。

あなたは怒り心頭に通販会社のコールセンターに電話し返品を要求しますが、窓口の人は「輸送の過程で商品が破損した」などと「自分は悪くない」の姿勢の一点張りで、まともに取り合ってもらえません。

あなたの怒りはおさまるどころかさらにヒートアップし、コールセンターとの長電話という泥沼にハマってしまいます。なかには、商品やコールセンターに対する批判レビューをネットに書き込む方もいらっしゃるでしょう。

こういったトラブルは、通販を利用する方であれば一度や二度くらいはご経験されたことがあるのではないでしょうか。

 

合理的に考えるのであれば、手元に届いた粗悪品はあなたにとって損失であり、損失回避を目的に販売元に交渉をかけるのは理解できますが、すでに解決困難であることがわかっているにも関わらず交渉を続けるのは、さらなる損失拡大をもたらす結果にしかなりません。

 

私たちが損失が拡大することを理解しているにも関わらず、交渉を続けようとするのは、その背景として、私たちに「不公平な扱いをする相手に仕返ししたい」という感情があることが見え隠れします。

実は、この感情は私たちが意識していないところでも働いており、上記のように明らかに怒りが湧いてくるシーンだけでなく、ちょっとイライラした気持ちになるだけでも、相手に「仕返し」したくなるようなのです。

今回は、そのようなちょっとしたイライラがもたらす「仕返し」を研究した面白い実験がありましたのでご紹介します。

参考文献は『不合理だからうまくいく 行動経済学で「人を動かす」』です。

 

 

続きを読む