グランディングパートナーズ|Grounding Partners

中小企業診断士DHが運営するブログです。「仕事」と「幸福」を主軸に、どうすれば経営者と従業員の方が幸せに、かつ生産性を高めて働くことができるかについて、その知識や知見を数々の文献を参照しながらご紹介していきます。

企業の生産性を高めるための「捨てる」技術

今回は「捨てる」というテーマでお送りしたいと思います。

以前に、マルチタスクは生産性を下げるというお話をしたと思いますが、そもそもタスクの量が多すぎるというのも従業員や組織の生産性に悪影響を及ぼしかねません。

マルチタスクの弊害についてはこちら

タスクの量が多すぎるために従業員が遅くまで残業を強いられる状況が続けば、当然のことながら従業員の健康状態が悪化します。従業員の健康状態が悪化すると、チームのパフォーマンスが低下しますから、結果として企業全体の生産性が損なわれることになります。

では、このような状況はどうすれば防げるでしょうか。従業員のタスク遂行能力を高めるといったことも考えられますが、その人のタスク遂行能力が高まると、あるジレンマが生まれます。優秀な人材ほど仕事が集まるようになるのです。

これでは根本的な解決にはならないでしょう。重要なのは、企業にとって本当に大切なものを見極め、不要なタスクを「捨てる」ことにあります。

今回は、捨てるためのメソッドについて簡単に触れていきたいと思います。

参考文献は、『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』です。

 

参考文献のタイトルにある「エッセンシャル思考」とは、上記の「捨てる」思想をそのまま体現しています。

エッセンシャル思考とは、まさに「より少なく、しかしより良く」を追求する生き方だ。 

このエッセンシャル思考を取り入れている企業の一例として、著書の中ではリンクトイン社の事例を紹介しています。

 リンクトインのジェフ・ワイナーCEOは、「より少なく、しかしより良く」がリーダーシップの決め手だと考えている。 

 リンクトインのCEOに就任したとき、彼はシリコンバレーのスタートアップにありがちな「何でもやってやる」という戦略にノーを言った。数々の魅力的なチャンスに流されず、最も重要な仕事だけを追求していった。

 彼は社員たちに「FCS(フォーカス)」の思想を繰り返し語る。「少数のことをより良くやれ」「正しい情報を正しい人に正しいタイミングで伝えろ」「意思決定のスピードを追求しろ」という3つのセンテンスの頭文字をとったものだ。

上記の引用で、「少数のことをより良くやれ」という思想をご紹介しましたが、これも「捨てる」思想と深く関連してくるでしょう。

よく仕事ができる人にありがちなのが、「自分が何でもできる」と勘違いしてどんなタスクでも引き受けてしまう傾向にあります。しかし、人間の脳の処理能力にも限界がありますし、私たちが生きている時間も有限です。たちまちその人はオーバーワーク状態に陥るでしょう。

では、チームとしてやるべきことをしっかりと見極め、タスクを絞っていくにはどうすれば良いのでしょうか。著書では「目標を明確にする」ことと「役割を明確にする」ことを挙げています。

 

目標を明確にする

企業や企業内部のチームにおいて、目標が曖昧だとどうなるでしょう。常に目先のタスクが最重要タスクになり、結果として雑務に振り回されることになります。

曖昧な目標とはたとえばこんなものです。

100以上もの実例を見ていくなかで、壮大だが空虚なステートメントがいかに多いかを思い知らされた。たとえば「世界から飢餓を撲滅する」という壮大な理想。わずか5人の組織がそんなことを言っても、リアリティがない。

明確な目標は、誰が見ても測定可能なものである必要があります。飢餓を撲滅したいのであれば、どの地域でどのような施策によって飢餓状態にある人々の生活をどのレベルまで改善していくのか、などを明確にしていく必要があるでしょう。

もちろん、その目標に従業員がどれだけコミットできるかについてよく話し合うことも大切です。

目標が明確であれば、従業員のパフォーマンスは高まります。なぜなら、その目標と関係のないタスクは必然的に重要度が下がり、リソースを割く必要がなくなります。つまり、そのタスクを「捨てる」ことができるのです。

 

役割を明確にする

目標と合わせて、従業員の役割を明確にすることも重要です。役割が曖昧だと何が起こるでしょう。仕事は仕事ができる人に集まります。よって、何でも屋の従業員が生まれます。特定の従業員に仕事が偏るため、組織のパフォーマンスは低下してしまいます。

 最近会ったあるCEOは、経営チームの役割分担をあいまいにしたばかりに、組織全体がひどい非効率に落ち込んだと話していた。このダメージを修復するために、彼は組織の明確化に全力を注いだ。自分の直属の部下を4人に絞り込み、それぞれの責任範囲を明確に分けて、組織運営を立て直したそうだ。 

従業員個々のパフォーマンスを最大化させるためにも、各人の強みを見極め、役割の明確化を行うことに多くの時間を割くべきであると言えるでしょう。

優秀な人から不要な仕事を「捨てさせる」のです

 

ここまで、企業の生産性を高めるための「捨てる」技術についてご紹介させていただきました。

繰り返しになりますが、人間に与えられた時間は有限であり、大切な資産です。本当に重要なことは何かを考え、時間という資産を守ることが今後ますます必要なスキルとなるでしょう。最後に、著書で印象的なフレーズを引用して今回の記事を締めたいと思います。

「本当に重要なのは何か?」

 

それ以外のことは、全部捨てていい。

 

[参考文献]

グレッグ・マキューン 著,高橋璃子 訳『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』