従業員からの信頼を高め生産性を向上させるための8つの要素
今日は「信頼」というテーマでお送りしたいと思います。
仕事を進める上で、チームのメンバーと信頼関係を築くことは非常に重要ですね。もし敵対した関係ですと、お互い気まずい状態になり、仕事をスムーズに進めることが難しくなります。
実はこの「信頼」については科学的に研究が進んでおり、従業員の信頼度の高い企業ほどより生産性が高いという結果が示唆されております。
今回は、信頼に関連する脳内物質について触れた上で、どうすればその脳内物質を増やし、信頼度を高めることができるかについて簡単にお話ししたいと思います。
参考文献は『トラスト・ファクター 最強の組織をつくる新しいマネジメント』です。
TRUST FACTOR トラスト・ファクター~最強の組織をつくる新しいマネジメント
- 作者:ポール J・ザック Paul J. Zak
- 発売日: 2017/11/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
信頼を育む脳内物質オキシトシン
著書の中では、信頼度を高めるにあたり脳内物質のオキシトシンが深く関連していると述べます。一般的にオキシトシンは愛情ホルモンと呼ばれていますが、著書では「モラル因子」という用語で説明され、このホルモンが分泌されることで他者との共感が高まり、相手のことを大切に思うようになります。これが、信頼度の向上に大きく寄与するというのです。
著書では、このオキシトシンの分泌を促し、信頼を高めるための因子として下記の8つをあげています(以下、著書からの引用)
- オベーション(Ovation)
- 期待(eXpectation)
- 委任(Yield)
- 委譲(Transfer)
- オープン化(Openness)
- 思いやり(Caring)
- 投資(Invest)
- 自然体(Natural)
以上、8つの太字部分をとって「OXYTOCIN」と呼ばれています。
著書では、このOXYTOCIN因子を高めることで信頼度を向上させることができると述べます。
上記の内容を全て説明すると非常にボリュームが大きくなってしまうため、それぞれ簡単にどのようなものかについて触れた上で、私が「これはすぐに使えそうだな」と感じたものについてお伝えしたいと思います。
まず、オベーションですが、これは一言で申し上げると「良い仕事をしたら称賛しましょう」ということです。たまにひどい職場ですと、従業員が仕事をミスしたときに周りに人がいる状態で大きな声で叱責したりするところがありますが、こういうことをされると嫌な気持ちになりますよね(というかこれは完全にパワハラですね)。逆です。良い仕事をしたらみんなの前で称賛するのです。これだけで、称賛された従業員のモチベーションが高まることがご想像いただけると思います。
次に、期待ですが、これは仕事を依頼する相手に対して、具体的な役割や課題を与えるということです。以前ご紹介した「役割の明確化」の考え方に近い概念になりますので、よろしければ過去の記事をご参照いただくとわかりやすいかと存じます。
(役割の明確化に関する記事はこちら)
委任は、従業員に仕事の進め方についてコントロール感を持たせることです。対の概念で「マイクロマネジメント」がありますが、仕事の進め方について細かく指示出しされると、従業員は「自分がコントロールされている」と感じ、仕事の生産性に留まらず心身へ悪影響を及ぼします。マイクロマネジメントは私も受けた経験がありますが、何も自分で決められないというのは非常にストレスでした。なので、ある程度仕事の進め方について裁量を持たせるのは、従業員のモチベーションを高める上で重要といえるでしょう。
委譲は、「委任」をより強化したものです。著書の言葉を引用させていただくと「自分の仕事をいつ、どこで、どのように行うか自由に選ぶことができる」というものです。
オープン化は、情報公開のことをいいます。決算情報や企業にとって重要な情報をあえて従業員に対してオープンにすることで、従業員は「自分が信頼されている」と感じるため、信頼度が高まるのです。
思いやりは、読んで字の如くです。わかりやすい例ですと、日頃から上司が部下に対して気遣いの言葉をかけていることや、従業員同士がお互いに感謝しあえている環境であれば、その職場は思いやりのある職場だといえるでしょう。著書では、思いやりを「従業員一人ひとりを、独特の癖や才能を持つかけがえのない個人として受け入れる」状態であると述べられております。
投資は、従業員のスキル開発の機会確保や福利厚生の充実といったものになります。コストはかかりますが、スキル開発といった教育は従業員の成長実感を促すことができるため、従業員満足度を高めるのに有効といえるでしょう。
自然体は、リーダーの資質に関するもので、部下に対してある程度の弱みを見せることができるかということです。弱々しいリーダーですと頼りないですが、常に強気で自信満々なリーダーもちょっと近寄りがたいですね。有能なリーダーでも、少し弱みを見せることで部下と同じ人間であるということを示すことができ、結果として部下からの信頼度を高めることにつながります。
まずはオベーションと思いやり
以上、OXYTOCIN因子について簡単にご説明させていただきました。上記は全て従業員からの信頼度を高めるために重要であるといえますが、一度に全て行うのはコストもかかりますし、なかなか現実的ではないと思います。
上記のうち「オベーション」と「思いやり」については、全く費用も手間もかからないため、どの企業でもすぐに実践することができるでしょう。
簡単なことから始めることで徐々に従業員の方の信頼を高め、権限の委譲や教育への投資を試していただくと良いのではないかと思います。
[参考文献]
ポール・J・ザック 著,白川部君江 訳『トラスト・ファクター 最強の組織をつくる新しいマネジメント』