脳を活性化させ仕事の生産性を高める「運動」
今回は運動が与える脳へのメリットについてお話ししたいと思います。
なんとなく運動は身体にいいよね、というのはみなさん共通認識としてあるかと思いますが、なかなか運動を習慣に取り入れるのは難しいと感じていらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
理由として考えられるのは、「具体的にどれくらいの強度で、どれくらいの時間運動すればいいかわからない」ということではないかと思います。
ダイエットされていらっしゃる方ですと毎日何1kmもランニングして……という方もいらっしゃるかもしれませんが、今回ご紹介する内容はそこまでハードではありません。
下記にご紹介する内容をご覧いただき、日々の習慣として実践いただくことで、脳の認知機能を高めて仕事の生産性を高めることが可能になるでしょう。
今回の参考文献は『脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方』を参照しております。
運動で脳を活性化させる
早速、次の研究を見てみましょう。
二〇〇七年の注目すべき実験では、最大心拍数の六〇から七〇パーセントを保って三五分間ランニングマシンを走っただけで、認識の柔軟性が向上することが示された。この研究では、五〇歳から六四歳までの成人四〇人に対し、新聞紙のようなありふれたものについて、どんな使い方ができるか、思いつく限り列挙することを求めた。たとえば新聞は、読むだけでなく、魚を包んだり、鳥かごの下敷きにしたり、食器を包んだりできる。三五分間、被験者の半分は映画を観て、残り半分は運動をしてすごし、その直前直後と、二〇分後にテストを受けた。映画を観ていたグループに変化はなかったが、走っていたグループは一度運動をしただけで、答える速度や認識の柔軟性が向上した。
いかがでしょうか。最大心拍数の60〜70パーセントであれば、軽いジョギング程度の強度で実現できます。
ちなみに、最大心拍数は一般的に下記の計算式から算出できます。
最大心拍数 = 220 ー 年齢
私の今の年齢は29歳ですので、最大心拍数は220ー29=191となり、最大心拍数の60〜70%ですと、だいたい115〜134くらいになります。
運動で不安を解消する
運動には認識の柔軟性の向上の他にもストレスや不安の解消の効果も認められています。
二〇〇四年、サザンミシシッピ大学の研究者ジョシュア・ブロマン=ファルクスは、運動が不安感受性を下げるかどうかを調べた。対象としたのは、不安感受性が高く、全般生不安障害を抱え、しかも運動は週に一回するかしないかという程度の、五四名の学生だ。ブロマン=ファルクスはその運動不足気味の被験者を、ランダムに二つのグループに分けた。どちらにも二週間のあいだに二〇分間の運動を六回させたが、一方のグループは最大心拍数の六〇パーセントから九〇パーセントという強度でランニングマシンを走らせ、もう一方のグループは時速一・六キロのペースでランニングマシンを歩かせた。最大心拍数はおよそ半分くらいのレベルだ。
どちらのグループにも不安感受性の低下が認められたが、激しい運動をしたグループの方が早く、大きな効果が出た。しかもそちらのグループだけが、体に出る不安の症状を恐れなくなった。
最大心拍数の90%となると、全力ダッシュした後のような状態になりますので、かなり激しいことが伺えますが、最大心拍数の60%を20分くらい継続するのであれば、無理なく続けられそうですね。
運動で生産性を高める
また、驚くべきことに運動は仕事の生産性にも良い影響を及ぼすのです。
イギリスのリーズ・メトロポリタン大学の二〇〇四年の研究では、会社のジムを利用している従業員は生産性が高く、仕事をよりうまく処理できると感じていることが明らかになった。被験者となった二一〇名の大半は、昼休みに四五分から一時間のエアロビクスのクラスに参加し、残りの人は三〇分から一時間、ウェイトトレーニングをしたりヨガをしたりした。一日の仕事が終わるとそれぞれ質問票が渡され、同僚と協力しあえたか、時間管理ができたか、締め切りが守れたかについて、自己評価した。回答者の六五パーセントが、運動をした日には三項目すべてにおいて、いつもよりよくできたと答えた。全体的に見て、彼らは運動をすると仕事に対して前向きになり、ストレスが減った。それに、昼休みにエネルギーを消費したにもかかわらず、午後になってもそれほど疲労を感じなかった。
最近はオフィスのなかにストレッチルームのような簡易的に運動できる空間をつくっていらっしゃる企業も少しずつ増えてきたのではないかと思います。
従業員の方が身体を動かしやすい環境を整備することで、仕事の生産性を高めることが可能になるのではないでしょうか。
運動を習慣に取り入れる
脳の活性化やストレス解消、仕事の生産性を高めるために運動がいかに役立つかをご覧いただけたかと存じます。また、その運動の内容もそこまでハードではなく、隙間の時間で実践いただくことも可能な内容かと存じます。
通勤をバスから徒歩に変えてみる、徒歩のスピードを少し早めてみる、こういった工夫も日々の生活に運動を取り入れるために重要になってきます。
是非無理のない範囲で実践いただくと良いのではないかと思います。