グランディングパートナーズ|Grounding Partners

中小企業診断士DHが運営するブログです。「仕事」と「幸福」を主軸に、どうすれば経営者と従業員の方が幸せに、かつ生産性を高めて働くことができるかについて、その知識や知見を数々の文献を参照しながらご紹介していきます。

従業員のパフォーマンスを高めるための進捗の法則

今回は経営者やマネージャーの方向けに、従業員の仕事のパフォーマンスを高めるための考え方についてご紹介したいと思います。

「パフォーマンスを高める」というテーマはいろいろな書籍やセミナーで語られる内容かと思いますが、今回は少しシンプルな内容でお送りしていきたいと思います。

結論から申し上げると「やりがいのある仕事が進捗すること」です。

 

今回の参考文献は『マネジャーの最も大切な仕事 95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力』を参照しております。

 

 

著書の中では、従業員のパフォーマンスが高まるための重要な要素として、従業員が「幸福を感じ、組織や社員へのポジティブな見方を持ち、仕事そのものからやる気を引き出されている」ことを挙げています。

このような従業員の心理状態を「インナーワークライフ」という用語で説明されており、やりがいのある仕事が進捗していることを従業員が実感することで、このインナーワークライフが良い状態となり、結果としてパフォーマンスや生産性が高まるということになります。

 

やりがいのある仕事といってもあまりぴんと来ないかもしれませんので、著書の内容を引用させていただきます。

やりがいのある仕事と言っても、それは社会にとって甚大なる影響を持つ仕事(中略)である必要はない。大切なのは自分の仕事が何かや誰か(自分のチームや、自分自身や、自分の家族でもいい)にとって価値のあるものだと自分が認識することだ。

目立たないところで仲間をサポートするような仕事も認識次第でやりがいのある仕事に結びつきます。

では、逆にやりがいがなくなる仕事とはどのようなものなのでしょうか。著書ではやりがいがなくなる要因として、以下の4つをあげています。

 

  1. 自分の仕事やアイデアがリーダーや仕事仲間から相手にされないこと
  2. 自分の仕事から当事者意識が失われること
  3. 自分たちが従事している仕事は日の目を見ないのではないかと社員に疑念を抱かせること
  4. 頼まれた数多くの具体的な作業に対して、自分にはもっと能力があるのにと感じてしまうとき

 

1〜3のわかりやすい例ですと、経営陣と現場社員のコミュニケーションエラーです。

前提として、経営者の方と従業員の方はそれぞれ見えている景色が異なります。経営者の方は会社そのものをどう発展させていくかを考えていかなければなりませんし、従業員の方は日々の業務を確実に回していく必要があります。

経営者の方は、会社を存続させていくために事業の方針転換を余儀なくされるときがあるかもしれません。

その際に、従業員への説明なくいきなり方針転換の結果だけ通知してしまうと、従業員は、自分が今まで誇りに感じていた仕事を一方的に手放さなければならなくなるかもしれません。そうなってしまうと「自分は経営陣には相手にされない」と感じたり、当事者意識がなくなったりして、結果として仕事のパフォーマンスが低下してしまいます。

よって、経営者の方は「なぜ方針転換が必要なのか」ということを従業員と丁寧にコミュニケーションをとることで、1〜3のような状態を回避し、やる気の低下を防ぐことが必要となります。

4は仕事の難易度の話になりますが、あまり簡単すぎるタスクばかりですと、従業員のやる気は低下してしまいます。当人の能力よりも少し難易度の高い目標やタスクを与えることでモチベーションを高めることが可能です。

もし、与えられる仕事が単純仕事しかないということであれば、そのタスクの処理速度に関する目標を設けるなど工夫することで対応できます。

 

経営者やマネージャーの方は、このやりがいを阻害する4つの要素に留意しつつ、従業員の仕事が(小さなものであっても)進捗するよう手助けすることが必要となります。

ここで著書の中の記載を引用したいと思います。

定期的に運動している人はジムを出るたびに少しだけ幸せになり、ジムに行っていなかった日々よりも幸せな状態が続いていく。同じように、繰り返し上司の優柔不断を目にするプロダクト・マネージャーはチームに参加していなかった日々よりも上司に対する見方をよりマイナスなものに育てていくだろう。

小さなポジティブな出来事やネガティブな出来事は、心を上向かせも落ち込ませもするちょっとした加速装置なのである。

人のマネジメントにあたっては、小さな出来事にしっかり気を払う必要がある。

つまり、従業員のインナーワークライフに大きな影響を与えるのがこの「小さな出来事」であり、上司の優柔不断で仕事が進まないといった小さな障害でさえ、大きなマイナスの影響を及ぼしてしまうことが示唆されています。

 

逆に言えば、ポジティブな影響もこの「小さな出来事」によって与えることもできます。そのために、経営者やマネージャーの方は「障害」の逆である「進捗」にフォーカスし、従業員が仕事を円滑に進めるために、助言やリソースの確保などに注力いただくとより良いのではないかと思います。

 

[参考文献]

テレサ・アマビール,スティーブン・クレイマー著(中竹竜二 監修,樋口武志 訳)『マネジャーの最も大切な仕事 95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力