弱みを隠すのは無駄? 成長を重視する組織が大切にしていること
皆さんは日々仕事に取り組まれるにあたっては、ご自身の弱みについてどう思われますか。
弱みの例としては、一人で業務を素早く処理するのは得意だけど周囲と協力するのが苦手だ、であるとか、周囲に合わせるのが得意だけど自分の意見をはっきり述べることができない、このようなイメージです。
読者の方で、すでにご自身の弱みの改善に取り組んでいらっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、なるべくであれば部下や同僚に弱みをオープンにしたくない、というのが普通だと思います。
ですが、よく考えてみれば弱みを隠すという行動はとてもエネルギーを使いますよね。このエネルギーを本来のやるべき仕事に回すことができれば、より生産性を高められるのではないでしょうか。
今回は、弱みをあえてオープンにすることで企業と従業員相互の成長を促す「発達指向型組織(DDO=Deliberately Developmental Organization)」について解説していきたいと思います。
参考文献は『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる』です。
なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか ― すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる
- 作者:ロバート・キーガン,リサ・ラスコウ・レイヒー,中土井僚
- 発売日: 2017/08/09
- メディア: Kindle版
では、なぜ弱みをオープンにする必要があるのでしょうか。理由は、弱みが人間にとって成長のチャンスであると捉え、相互に弱みを認識しフィードバックを与え合うことによって、人が成長し企業が発展すると考えるからです。
全従業員が自分の弱みを認識しそれを改善しようと努力を重ねること、またその取り組みをサポートする環境や体制が整っていること、これがDDOの基本コンセプトです。
コンセプトの要素を分解すると以下の3つに分類できます。
- エッジ(発達への強い欲求)
- グルーヴ(発達を実現するための慣行)
- ホーム(発達を後押しするコミュニティ)
エッジとは直訳すると限界です。つまり、自分の弱みや能力の限界を知ることを可能にし、それと向き合うことに価値を見出せるように促す企業文化のことです。
企業文化を定着させるためには、日々の具体的な取り組みが必要です。これをグルーヴといい、週1回などの頻度で定期的にフィードバックを与え合うような場もこれに含まれます。
自分の弱みや限界と向き合い、相互にフィードバックを与え合うにあたっては、指摘する側もされる側も心理的に安全であることが必要です。よって、役職や肩書きに囚われずに、誰もが遠慮せずに発言できる場づくりが重要となります。これがホームの概念です。
DDOであるには、上記の3つの要素すべてを満たす必要があります。
ホームの要素がない職場は、互いに揚げ足取りをするような、とてつもなく劣悪な職場環境となるでしょう。
グルーヴがなければ、外部からコンサルタントを招いて研修を行っても、企業に定着せず単発で終わってしまいます。
エッジがなければ、福利厚生制度などで成長の機会を提供しても、一部の優秀な社員のみが利用するだけで企業全体のパフォーマンスの底上げにはつながりません。
いずれの要素についても、すでに部分的に実践されている企業の方もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。
コンセプトの核となるのは、組織の目標(売上や利益など)が個人の能力の発達と一体になっていることです。
このことをリーダーの方が認識いただくだけで、DDOになるための距離がグッと短くなります。
書籍で紹介されているDDOの事例は3社で、業種や規模も全く異なっていますが、各社がそれぞれの形でDDOになるための取り組みを行ったことで、生産性向上や離職率を改善できたことが述べられています。
DDOになったらどんないいことがあるのか、DDOになるには具体的にどのようなことをすれば良いのか、これらの点について、もしご興味があれば書籍のほうもチェックいただくと良いのではないかと思います。
参考までに、従業員個人の方の限界や弱みの向き合い方、またその克服方法につきまして、以前ご紹介した「変革」に関する記事をリンクで掲載しておきます。
リーダーの方向けに書いておりますが、自己変革という点ではすべての方に使えるメソッドだと思います。
[参考文献]
ロバート・キーガン,リサ・ラスコウ・レイヒー 著,池村千秋 訳,中土井僚 監訳『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる』