グランディングパートナーズ|Grounding Partners

中小企業診断士DHが運営するブログです。「仕事」と「幸福」を主軸に、どうすれば経営者と従業員の方が幸せに、かつ生産性を高めて働くことができるかについて、その知識や知見を数々の文献を参照しながらご紹介していきます。

時間かけすぎ? 意思決定を5秒でしたほうが良いケースとその理由

今回は意思決定のスピードがその後の結果の良し悪しに影響するか、というテーマでお話ししたいと思います。

企業において何らかの意思決定を行う際に、社長の鶴の一声ですべてが決まるところもあれば、重役の方々が集まって何時間も議論を重ねて決めるといったところもあるかと思います。

もちろん結論を出すにあたって、時間のかけ方は時と場合に応じて変わると思いますが、概ねスピード重視のところと、熟考重視のところに分かれるのではないでしょうか。

一般的に、時間をかけてじっくり考えた方が最適な結果を得ることができるように思いがちですが、実は時間をかけずに瞬時に意思決定をしたほうが、むしろ熟考するよりも良い結果を得ることができる場合があるのです。

今回は、瞬時に意思決定をしたほうが良い場合と、逆に時間をかけて意思決定したほうが良い場合について簡単に解説したいと思います。

 

得意分野は5秒で判断

まずは、瞬時に意思決定した方が良いケースを見てみましょう。

参考文献は『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』です

これからご紹介する実験は、被験者にブランドバックを見せて、本物か偽物かを判断させるというものです。

 被験者の半分は五秒間しか考える時間を与えられず、勘に頼るしかなかった。残りの半数には三〇秒が与えられ、じっくり観察して特徴を分析できた。

 研究チームは、被験者のブランドバックの所有歴も調査した——コーチやルイ・ヴィトンなどのハンドバックを三つ以上持っている人もいれば、ブランドもののハンドバックを触ったことのない人もいた。

 おもしろいことに、有名ブランドのハンドバックの所有者ならば、与えられる時間が短ければ短いほど、正確な判断ができるということがわかった。

 いくつも所有したことのある人は、バックを見る時間が五秒のみのときの判断は、なんと三〇秒のときの判断よりも二二パーセントも精度が高かった

 類似のものを何年もじっくりと見ていると、直感が分析に勝ることがあるのだ。無意識のパターン認識が優れているためである。むしろ時間をかければかけるほど、木を見て森が見えなくなってしまいがちだ。

もしご自身が得意分野において意思決定に時間をかけているということであれば、もしかしたら瞬時に意思決定をしたほうが良い結果を得られる可能性が高そうです。

 

知識のない分野は熟考すべき

それでは逆に素早く意思決定せずに、じっくり考えた方が良いケースとはどのようなものでしょうか。

例として、スティーブ・ジョブズセグウェイに惚れ込んだ話をしてみましょう。

セグウェイといえば、いっとき話題になった二輪の電気自動車ですね。アイデアという斬新さには優れていましたが、価格が高く、かつあまり実用的ではなかったため世の中に普及することはありませんでした。

ジョブズは、セグウェイの斬新なアイデアや開発者の情熱的なプレゼンテーションに直感的に惚れ込んでしまったため、周囲の反対を押し切りセグウェイに出資してしまうのです(その後どのような結果になったかは皆さんのご想像のとおりです)。

この事例からどのような教訓を得ることができるでしょう。著書の内容を引用します。

ある特定の分野において経験がある先駆者であっても、他分野での予測にも長けているかというと必ずしもそうではない

つまり、得意分野でなく、知識や経験がない場合はじっくりと分析するほうが良い結果を得られる可能性が高まります。

 

バイアスに注意

また、瞬時に意思決定すると、バイアスによって誤った結果を招く可能性があることも考慮に入れる必要があります。

これについては過去にご紹介した記事をリンクで載せておきますので、合わせて参考にしていただけければと存じます。

バイアスの例として、他にも下記のようなものも参考になるかと思いますのでご紹介します。

参考文献は『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』です。

これからご紹介するのはなぞなぞです。直感で解いてみてください。

 ある男性と彼の息子がひどい交通事故に巻き込まれた。父親は亡くなり、息子は救急治療室に運び込まれた。病院に着くなり、治療に当たった医者はその子を見て息を飲んだ。「うちの子だ!」。さてこの医者は誰か。

解けましたでしょうか。

答えは医者=男性という思い込み(バイアス)を捨てた瞬間に解けます。この医者は負傷した男の子の母親です。

著書のタイトルは『「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』となっているのに、この事例は2秒では判断がつかないですね。

著書においては、最初の2秒=直感が頼りになるケースと、頼りにならない(落ち着いて考えた方が良い)ケースについて、それぞれ事例を挙げながら解説されています。

冒頭にご紹介した書籍の内容と通じる部分は多くあるので、よろしければこちらの書籍もチェックいただくと良いのではないかと思います。

 

[参考文献]

  • アダム・グラント 著,シェリル・サンドバーグ 解説,楠木健 監訳『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』
  • マルコム・グラッドウェル 著,沢田博・阿部尚美 訳『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい